箸の持ち方 使い方の話 その4
今日の給食は シーフードカレーとポパイサラダ、りんごです。
冬の魚「たら」や季節の野菜などを使ってみました。児童は「たら? 入ってた?」と一生懸命カレーをかき回し「見つからない」と言っていましたが、平常のカレーに使う肉の量より、多く入っておりました。
給食はスプーンの日ですが、箸の話4回目です。「持ち方はできるようになったけど、さてその先は…」がテーマです。
箸を持てるようになったのに、実際の食事の場になると持ち方が崩れるということがあります。
これらのケースは①「まだ意識していないと持ち方が保てないのに、意識するのを忘れる」、②「箸と手のバランスが悪い」、③「手首やひじがうまく使えない」ことに、だいたいの原因があります。
①「まだ意識していないと持ち方が保てないのに、意識するのを忘れる」についてです。
どんな運動もですが、技術を身につけることには「最初の一回目ができるようになる」→「何度やっても正しい動作ができるようになる」→「意識しなくても正しい動作ができ、状況に応じて動作を使いこなせる」という、いくつかの段階があります。(細かく分けると、もっとたくさんの段階があります)
専門的なことは、とても深くなるので省きますが、一回できるようになり、覚えて終わりではないのです。
一度覚えた動作は、繰り返し練習することで「自動化」と呼ばれる、意識しなくてもできる状態になります。
自動化になるまでで大切なのは「繰り返す」こと。そして「自分の動作はおかしくないか?」と考えて「直しながら」繰り返すことです。
「直しながら」が必要な段階で考えることを省くと、間違った状態で覚えてしまうという、「変なクセがつく」現象が発生します。
完全に定着したなと思える段階になるまでは、周囲が本人に目を配り、声をかけ、動作について意識させてあげることが大切です。
一人で直していく時は、「はじめの一口は正しい持ち方で」などと決めて行うのが、特に効果的です。
小学生くらいだと、手の機能ができている状態、かつかなり徹底した一対一の指導で持てるようになるようです。それには、10分×5~6回以上、意識せず持てるようになるまで最低15~16回くらいの連続した指導が必要です。
人によっては「身につけた動作を使ってきた年月と同じだけの時間が、直すことには必要」とも言います。
一回目ができるまでより、できたことが身につくまでが、とても長く大変です。
だから、基本的に持ち方の練習と、食事は切り離して行うことが大切です。
食事中は楽しくおいしく食べる方が優先です。
②「箸と手のバランスが悪い」ことについてです。
箸の持ち方を覚える節目は「5歳」頃がよいとされています。
手の大きさが幼児用の箸にちょうどよくなり、神経や筋肉も発達し、言われていることを理解できるようになるからだそうです。
そういった説があるくらい、手の大きさと箸の長さのバランスは、よい持ち方に深く関係しています。
箸には、持ちやすく扱いやすい場所があり、手の大きさと箸の長さが合っていると、さほど無理をしなくても正しい動きができます。
手の大きさに合わない大きい箸を使うと、箸先の合わせやすい位置が手前にずれてコントロールしづらく、箸が交差しやすくなります。
小さい箸だと、箸を下ろしたときに中指が邪魔になり、中指と一緒に箸が落ちすぎて、こちらも箸が交差しやすくなります。
手にあった箸の長さは「一(ひと)あた半(はん)」と言われます。
「一あた」は親指と人差し指を軽く広げた間の長さ。その目安で、一つ半ということです。市販の子ども用箸はだいたい16.5㎝。大人用は20㎝~22㎝くらいです。
箸先が交差しやすいという方は一度、手と箸の長さが合っているか、チェックしてみてはいかがでしょうか。
③手首やひじがうまく使えないことは、豆つかみなどがうまくできるが、実際の食事の場になるとうまく使えない人に多く見られる現象です。
箸は「開いて閉じる」だけの動作をしています。つかんだものの向きを変えたり、それを口元に持って行ったりする動作には、手首やひじの動きが重要です。
特に手首をひねる動きは大切で、食事の主要な動きのほとんどが手首をひねる動きで行われます。
「自動化」に至るほど正しい持ち方に慣れてないことが根幹にありますが、箸の持ち方を意識しすぎている時に手首が緊張して、動かせなくなる例が多いようです。
緊張に気がついたら、箸を保持したまま手首を回転させることなどを行い、手首の緊張を解くと、だいぶ解消しやすくなります。
効果的な箸の持ち方習得法や運動の習得・習熟については、まだ多くの研究がされているところです。
簡単に、すぐにはできないものであるということを理解した上で、本人や教える側が動作を身につけていく過程を楽しみ、どうやったらできるかな、と考えながら行うと上達は早まるのだそうです。