校長室からお届けします

にっこり 校長室だより「自立の丘」№11 令和5年7月6日発行

◆ もうすぐ夏休み  ~ 夏休みならではの学習を ~
 7月21日から35日間の夏休みに入ります。普段の宿題では中々身に付けられない学力を高めさせたいと願っています。それは“探究力”(問題を解き明かしていく力)と“主体性”(進んで学習しようとする態度)です。そして,それに打って付けなのが“理科自由研究”です。
 我が家の息子や娘は,二人とも6年間“理科自由研究”に取り組みました。1・2年生の頃は親が手伝いましたが,学年が進むに従って,徐々に自分で出来るようになり,高学年の頃には,親は見守るだけになりました。何回かは素敵な賞も頂き,幸せだったと感じています。
 親としては,進んで学習する気持ちを育てたいという願いもありましたが,やり遂げた達成感や自信が良い思い出となり,子供達の人生を応援してくれたら良いとも考えていました。それは確かめようのない事ですが,それぞれ6冊ある研究作品のその後の行方が教えてくれました。子供達は家を出る時,自分の部屋の荷物を整理して引っ越して行ったのですが,6冊の作品は,それぞれの部屋の寂しくなった棚に“大事そうに”揃えて置いてありました。

    夏休みは思い出づくりのチャンス ~ 理科自由研究のすすめ ~   
 6年生の私は,夏休みが,もうすぐというある日「理科の自由研究に何をやろうかなあ。」と,ぼんやり家の正面に見える山,片曽根山を見ていました。「小学生最後の夏休みだから,あの山みたいに,でっかいことに挑戦したいなあ。」と,ふと思いました。そして,こんなことを思いつきました。「よし,あの山にある花や草などの植物を全種類採集して押し花標本を作ってやるぞ」と。今,考えると,その頃に現在人気のNHK朝ドラ『らんまん』のモデルとなった牧野富太郎博士の伝記を読んでいたからかも知れません。日本中を植物採集して歩き回り,日本で初めての植物図鑑を創った,すごい博士です。
 夏休みが始まると,行ける日は毎日のように山に出掛けて,籠に入るだけのたくさんの植物を根っこごと採ってきて,新聞紙に挟んで重石をのせ,押し花標本を作っていきました。同時に植物の名前を植物図鑑で調べました。何日か経つとすぐに山の全種類の植物採集をすることは,到底無理で如何に大変な事なのかに気付きました。採っても採っても,まだ採っていない植物が,それこそ山のようにあるのです。驚きました。「山の全種類の植物」としていた自由研究の目標を「夏休み中に出来るだけ」と変えざるを得ませんでした。
 今まで「草」と一言で呼んでいた植物が,実際は,たくさん有りすぎて,標本に出来たのは,50種類位でした。でっかい挑戦は成功しませんでしたが,それでもいろいろ分かりました。植物には,とてもたくさんの種類があること,植物の一つ一つに素敵な名前や面白い名前があること,山の上の方にしかない植物があること,毒のある植物もいくつか身近にあることなどです。例えば,家の近くにあったタケニグサという植物は切ると茎から黄色い汁が出るのですが,それが毒だったんです。私はタケニグサを押し花標本にする時に切ったので黄色い汁に触ってしまいました。口に入れなかったので助かりました。だから,タケニグサは今でも一目で分かります。いろいろ分かった事と一緒に「自由研究を一生懸命やったなあ」という良い思い出が出来ました。
 当たり前だと思っていることや不思議だと思ったことを実際にやって確かめてみる事に自分から挑戦できる学習。それが夏休みの理科自由研究なんです。自分で考えて自分で研究を進めていくので,夏休み中に1ヶ月以上学び続けることが出来ます。私達の目標の一番目「自ら学び続ける子ども」にぴったりです。完全にやり遂げることが出来なくても,私のように自由研究が夏休みの一番の良い思い出になることもあります。先生方やお家の方と相談したり,科学に関する本を読んだりして,今のうちに計画を立ててください。自分の心を励ましてくれるような良い思い出の1つを手に入れるためにも,自由研究にぜひ取り組んでほしいと思っています。