校長室からお届けします

校長室だより「自立の丘」№47 令和6年12月5日発行

2024年12月6日 08時41分

◆ 昔話から生き方を考える
  最近の“闇バイト”問題を見ていると,「楽をして金銭を得よう」「苦労しないで生きて
 いこう」というような風潮を感じてしまいます。「幸せに暮らしたい」とは,誰しも思うところかも知れませんが,それが「遊んで暮らす」「楽して生きる」ことでは無いことを考えてほしいと願い,昔話から考えることを昨日の全校集会でやってみました。

みんなは『浦島太郎』のお話を知っていますか。
 むかしむかし,ある村に,心のやさしい浦島太郎という若者がいました。浦島太郎が海辺を通りかかると,子どもたちが大きなカメを捕まえていました。そばによって見てみると,子どもたちがみんなでカメをいじめています。「おやおや,かわいそうに,逃がしておやりよ」「いやだよ。おらたちが,やっと捕まえたんだもの。どうしようと,おらたちの勝手だろ」見るとカメは涙をハラハラとこぼしながら,浦島太郎を見つめています。浦島太郎はお金を取り出すと,子どもたちに差し出して言いました。「それでは,このお金をあげるから,おじさんにカメを売っておくれ」浦島太郎は,子どもたちからカメを受け取ると,カメをそっと,海の中へ逃がしてやりました。
 さて,それから二,三日たったある日の事,浦島太郎が海に出かけて魚を釣っていると,
「・・・浦島さん,・・・浦島さん」と,誰かが呼ぶ声がします。「わたしですよ」すると海の上に,ひょっこりとカメが頭を出して言いました。「このあいだは助けていただいて,ありがとうございました。おかげで命が助かりました。ところで浦島さんは,竜宮へ行った事がありますか?」「竜宮? さあ? 竜宮って,どこにあるんだい?」「海の底です。わたしがお連れしましょう。さあ,背中へ乗ってください」
 カメは浦島太郎を背中に乗せて,海の中をずんずんともぐっていきました。海の中にはまっ青な光が差し込み,コンブがユラユラとゆれ,赤やピンクのサンゴの林がどこまでも続いています。浦島太郎がウットリしていると,やがて立派なご殿へ着きました。カメに案内されるまま進んでいくと,この竜宮の主人の美しい乙姫さまが,色とりどりの魚たちと一緒に浦島さんを出迎えてくれました。
「ようこそ,浦島さん。わたしは,この竜宮の主人の乙姫です。このあいだはカメを助けてくださって,ありがとうございます。お礼に,竜宮をご案内します。どうぞ,ゆっくりしていってくださいね」浦島太郎は,竜宮の広間ヘ案内されました。浦島太郎が用意された席に座ると,魚たちが次から次へと素晴らしいごちそうを運んできます。ふんわりと気持ちのよい音楽が流れて,タイやヒラメやクラゲたちの,それは見事な踊りが続きます。ここはまるで,天国のようです。
 そして,「もう一日,いてください。もう一日,いてください」と,乙姫さまに言われるまま竜宮で過ごすうちに,三年の月日が経ってしまいました。
 三年経ったある日,浦島さんは竜宮から帰ろうと思いました。


 今日の『浦島太郎』のお話は,ここまでです。浦島太郎は,3年もの間,仕事もせずに毎日遊んで暮らし,おいしいごちそうを音楽や踊りを見ながら食べる,天国のような生活をしていました。一生そうやって暮らすことも出来たのに,なぜ帰ろうと思ったのでしょうね。遊んでいた方が楽なのに,仕事をしたり食事を作ったりする,暮らすのが楽ではない世界に戻ろうと思ったのでしょうね。みんなは,どう思いますか。友達と話し合ってみましょう。

大人の皆さんは,どうお考えになりますか。