校長室からお届けします

校長室だより「自立の丘」№20 令和5年11月15日発行

2023年11月16日 08時02分

◆ 七五三の祝いに“家族”を想う
 最近,ある神社を訪れる機会がありました。秋晴れの素晴らしい日であった上に日柄も良かったのか,多くの七五三参りの家族連れを見かけました。その時,最近聞いたこんな話を思い出しました。

 アメリカ合衆国の,ある病院にナンシーという3歳の女の子が入院してきました。身長と体重は1歳児の標準体型ほど。全身が干(ひ)からびたような痛々しい姿で,言葉を話すことも出来ませんでした。そして身体の機能的な問題を抱えていないのに,入院から3ヶ月を過ぎても全く成長が見られなかったのです。
 実はナンシーの入院以来,両親は一度も面会に来ていませんでした。病院からの呼び出しにも応じる気配はありません。何とか親に会わなければと考えた医師は,自宅を訪ねることにしました。
 ナンシーの両親は,エリートコースの中でも最高といわれるハーバード大学の経営大学院に在籍しており,二人とも論文の執筆に追われる毎日を送っていました。医師が自宅を訪ねた際も,居間に通されたかと思ったら,執筆が一(いち)段(だん)落(らく)するまで待たされるという有(あり)様(さま)でした。
 医師が待ちきれなくなった頃,ようやく書斎から出て来た母親は,こんな事を言いました。
「この論文が通れば,世界中のどこでもエリートとして受け入れられます。だから論文が通った後で子供をつくりたかったのです。ナンシーは間違って生まれてきてしまった……。今は面倒を見る暇がないので,もうちょっと預かっていて下さい。」
 医師は黙ってその家を後にしました。
 病院に戻った医師は,陽当たりが良く,人の行き交う廊下にナンシーをベッドごと移動させると,頭上にこんな貼り紙をしました。

― 私はナンシーです。
 あなたがここを通るとき,もしあなたが急いでいるならば「ナンシー」と呼んでほほ笑みかけて下さい。 もしあなたに少しの時間があるならば,立ち止まって「ナンシー」と呼びかけ,私を抱き上げ,あやして下さい。 もしあなたに充分なゆとりがあるならば「ナンシー」と呼んで私を抱き上げ,ほおずりをして,あなたの胸と腕の温かさを私に伝えて下さい。そして私と会話をして下さい。―

 この貼り紙を見た医師や看護師は,皆が足を止めて,ほほ笑みながらナンシーの名前を呼び,抱いたりあやしたりするようになりました。
 こうして1週間が過ぎた頃,ナンシーはほほ笑むようになりました。そして,3ヶ月が経つ頃には,正常な3歳児の体重に近づき,言葉も急速に覚え始めたのです。

 七五三祝いの年令まで健やかに成長するには,食べ物の栄養だけでなく,愛情という心の栄養も必要なのだろうと思います。子どもたちが今の姿まで成長しているのは,間違いなく周囲の大人の温かい愛情を充分に注がれてきたからなのだろうと感じた秋晴れの一日でした。

校長室だより「自立の丘」№19 令和5年11月2日発行

2023年11月7日 14時20分

◆ 自分を高める達成感
 子どもたちは,スポーツ・フェスタで,みんな良く頑張りました。達成感を感じた子も多かったと思います。残念ながら思うように頑張れなかったなあと思う子には,持久走記録会で力を尽くしてほしいと思い,昨日の全校集会で次のような話をしました。

苦しい持久走の先にあるものは …

 今,持久走の練習に取り組んでいますね。でも,中には「長い距離を走ったり,長い時間走るのは,辛いなあ」とか「いやだなあ」とか思っている人がいるんじゃないかな。実は私も持久走が苦手だったので,そんな人の気持ちは分かります。練習の最中は,いつも「歩きたいなあ」「止めたいなあ」と思ってばかりいました。でも,あることを通して,持久走に前向きになりました。
 私が,小学校の先生になるための試験を受けた頃は,テスト問題だけでなく,先生は,体育の授業をするのだからと持久走1500mの試験もありました。1500mは沢石小の外側のトラック7周半です。それを7分間以内に走らないと不合格という試験だったと思います。しかも,夏の一番暑い気温30度以上にもなる午後に走るのです。
 先生になるための試験の1か月まえの6月に,その当時住んでいた家の近くの川沿いの道を1500m,試しに走ってみました。大学4年生だったので,高校を卒業してから3年以上長い距離を本気で走ったことがなく,自信が無かったからです。恥ずかしいので,辺りが暗くなった夕方に走りました。思った以上に苦しかったです。息ができないほどゼイゼイするし,足は思うように前に出ません。やっとのことで1500mを走りきって,倒れ込むように時計を見ると,タイムは10分間以上かかっていました。ショックで,また倒れ込みそうになりました。「これじゃあ,先生になれないぞ」と思って,それから毎日,夕方に持久走の練習をすることにしました。
 早速,次の日から練習を始めましたが,もともと持久走が苦手だったので,気が乗りませんでした。でも,陸上競技のマラソンは42.195㎞走ります。42,195mですから,1,500mは,その30分の1ぐらいです。そう思って頑張ることにしました。第1日目,苦しさは同じでしたが,ほんの少しだけ,タイムが短くなりました。わずかに速くなったのです。それから毎日,タイムを計(はか)りながら練習すると少しずつですが,必ずタイムが短くなっていきます。そして,1ヶ月間毎日走った結果,試験の3日前には,7分間より30秒位速く走れるようになりました。これで,安心して試験を受けられるようになりましたが,何より目標を達成できた喜び「達成感」で一杯になったことを覚えています。
 持久走は,いろいろな運動の中で,特に練習すれば練習するだけ上達する運動だと言われています。例えば,短い距離の100m走は,どんなに頑張って練習しても,もともと足の速い人を抜かすことは出来ないことが多いものです。しかし,持久走は違います。優勝している多くの人は練習を積み重ねた人ばかりです。2004年アテネオリンピックで金メダルを取り,翌年出した日本記録を未だに破られていない,野口みずき選手は「(練習で)走った距離は(私を)裏切らない」と言っています。つまり「練習で走れば走るほど,その距離は必ず自分を速くしてくれるものだ」ということです。
 持久走は嫌だなあと練習を避けている人は居ませんか。走らなければ絶対に速くなりません。走れば必ず速くなります。そして練習をやり遂げたり,走りきった時の何とも言えない,良い気持ち「達成感」を感じることが出来ません。弱い自分に打ち勝つことが出来るのも持久走の良いところです。残りの練習を本気でやって1秒でも自分の記録を縮めましょう。そして同時に,「自ら身体をつくる子ども」,つまり自分から身体を鍛えてつくる沢石の子どもになりましょう。

校長室だより「自立の丘」№18 令和5年10月10日発行

2023年10月11日 13時35分

  2学期のスタートです
 三春町の学校は長期休業前でも先生が学期末事務に忙殺されずに子ども達とじっくり向き合うことができるよう2学期制を実施しています。隣の田村市の学校も同様です。1学期終業式と2学期始業式を合わせて「期分けの式」として次のような話をしました。

節目によって力を伸ばそう

◆期分けの式のように,一つの事が終わって,何かがまた始まる時のことを“節目”と言います。ある植物にも節目と呼ばれる部分があるので,その話をします。どんな植物でしょうね。

◆みんなは,これが何という植物か,よく知っていますね。そうです。竹です。では,竹の所々にある区切りのような部分は何て言うのでしょうか。節あるいは節目と言います。学校の周りにはたくさんの木がありますが,ケヤキや桜などの木は,竹のように中が空洞になっていませんし,その途中に節目はありません。どうして竹には節目があるのでしょうか。

◆竹の節目の数は竹が小さいときのタケノコの時から決まっていて,孟宗竹という太く背が高くなる竹では大体60個位あるそうです。この孟宗竹は,何と1日に80cm~100cmと言いますから1年生の背の高さ位も伸びることがあり,2ヶ月ぐらいの間に20m,つまり沢石小学校体育館の2倍以上の高さに成長します。凄い高さで,凄い速さですね。どうしてそんなに伸びるかというと,60個位の節目全部に成長点といって根から吸い上げた養分を伸びる力に変える所があるからなのです。竹以外の植物は,先の方の1箇所にだけ成長点がありますが,竹はどの節目にも成長点があり,60カ所の節目が一気にどんどん成長するので,ぐんぐん伸びるんです。竹は,節目があることによって早く大きく成長する訳です。

◆竹の節目には,成長の他にも大事な働きがあります。竹の中は写真のように空洞です。ですから,とても弱くて,強い風が吹いたり,雪が積もったりすると,すぐに折れてしまいそうですね。ところが,竹は滅多に折れません。それは,節目がたくさんあることで,しなやかなのに節の内側で強くなっているからです。竹は,節目によって強くもなっているのです。

◆竹の節目は,自分の体を成長させたり強く丈夫にしたりするので,竹にとって,とても大事なんですね。今日のように1学期と2学期が,かわる日も節目になります。今まで失敗したことや上手く出来なかったことが,ある人にとっては,この節目は自分を大きく成長させる,また,強くて丈夫な自分にかえるチャンスです。あまり失敗をしないで頑張ってきた人も,自分をさらに高めるチャンスです。節目は,新しい自分をつくり出すチャンスなんです。自分の目標をもう一度見直して,しっかり目標を立てましょう。みんなの学校生活や家庭生活は,上手くいかなかったら,節目を活かして何度でもやり直すことが出来ます。節目は自分で勝手に作っても良いのです。失敗したことや上手く出来なかったことをいつまでも残念に思っていないで節目を活かして,何度でも何度でも再スタートしましょう。沢石小44名全員が節目のチャンスを活かすことを期待しています。

校長室だより「自立の丘」№17 令和5年10月5日発行

2023年10月6日 09時13分

◆スポーツ・フェスタ せまる!
 子どもたちは,来週に迫ったスポーツ・フェスタの練習に取り組んでいます。全員が力を出し切り,楽しかったと思えるフェスタ,小さな感動が生まれるようなフェスタになることを願っています。全校集会で次のような話をしました。

スポーツ・フェスタで心も逞しくしよう

 沢石小ではスポーツ・フェスタの前の形である運動会が,少なくても昭和35年,今から63年前には始まっていたようです。その頃は,沢石小には今の10倍の400人位の児童が居て,沢石中の200人位の生徒と一緒に600人位で,沢石中の校庭で運動会をやっていました。それ以来ずっと行われてきた学校行事なのです。このことは,運動会,スポーツ・フェスタが,どれだけみんなにとって大切なものであるかを示しています。どうしてスポーツ・フェスタをそんなに長く続けて来たのでしょうか。もう勘のいい人は気づいていますね。そうです,私たち沢石小の目標の三番目「自ら身体をつくる子ども」に関係がありますね。身体を丈夫に逞しくするためなんです。
 スポーツ・フェスタが近づくと,私は,ある学校の学年で一番足の速い,とある5年生の男の子のことを思い出します。その子の学校では学年毎に児童代表のスポーツ・フェスタ実行委員がフェスタの種目を話し合って決めていました。実行委員会ではこんな種目を考えて準備に取りかかりました。個人競走のチャンスレースです。
 その種目とは,まずスタートしてカードを拾います。そのカードに書いてある色,赤・青・緑のどれか一つの色のドッジボールを探してゴールするというものです。ところが,その男の子には生まれつき,目に問題がありました。色の見分けがつきにくいという問題です。カードに書いてある字で探すべきボールの色が分かっても,どのボールがその色なのか分かりにくいのです。その子の目の問題を知っている先生達は迷いました。「実行委員の意見は大切にしたい。でもフェスタでその子に悲しい思いはさせたくない。競技を変えるか。それとも,どうにかしてその子に手助けをしようか。」と…。
 次の日,その子のお母さんから電話がありました。「先生,息子から聞きました。3色のボールを探すチャンスレースは予定通りやって下さい。息子は,これからも色の分かりにくい自分の目と共に生きていかなければなりません。自分で問題を解決するように話しておきますから…。」と。5年生のチャンスレースは予定通り行なわれることになりました。
 フェスタ当日になりました。6年生担任の私は準備係で5年生チャンスレースのドッジボールの近くにいました。その子がスタートしカードを拾い,ちょっと迷いながらボールを選びました。そして,どうしたことか,ゴールではなくて係の私の方へまっすぐ走ってきます。そして私にこう聞くのです。「先生,このボールの色は緑ですよね。」私が「そうだよ。」と答えると,にこっと微笑んでゴールに向かいました。私の所に回り道をしたので2着でした。でも,とても嬉しそうでした。私は「たくましいなあ」と思いました。走る姿にではなく,私に聞きに来るという自分で行動する姿を見て,そう感じたのです。
 スポーツ・フェスタは,その練習の中や当日の演技や競技の中で,体を鍛えたり進んで考えて行動したりするのにぴったりの行事です。自分にいろいろな問題があってもそれを乗り越えていけるような体だけではなく自分の強い気持ちや心をつくることも「たくましく」なることだと感じますよね。スポーツ・フェスタは,みんな自身の体も心もたくましくなるためにある行事ですから,フェスタの競技,演技,係や応援の活動,そして練習や準備に体の力と頭の力の両方を振り絞りましょう。

 

校長室だより「自立の丘」№16 令和5年9月27日発行

2023年9月27日 13時53分

◆ 一人一人に適した教育を!
 全国人権作文コンテスト入賞作品に小学校の特別支援学級について書かれた作文がありました。沢石小には,ゆっくりとした学びを支援する『ならなし1組』と気持ちを落ち着かせてじっくりと学ぶ事を支援する『ならなし2組』があります。一人一人に適した教育に力を入れて,全員の“自立”を実現したいと思っています。

 【日本新聞協会長賞】  実を結んだ さくらんぼの木
                       愛知県一宮市立中部中1年 豊島 湊
 ぼくが小学校に入学した時,家の庭にさくらんぼの木を1本植えた。ぼくの住む一宮市は毎年小学1年生にお祝いで入学記念樹をくれるからだ。庭のさくらんぼの木は,毎年花は咲くけれど,実がなることは一度もなかった。・・・(以下省略)

法務省ホームページ参照  https://www.moj.go.jp/JINKEN/pdf/08.pdf

校長室だより「自立の丘」№15 令和5年9月21日発行

2023年9月22日 15時24分

◆ 全国や県規模で見る沢石小の学力
 9月6日に6年生には今年4月に行われた全国学力テストの個人票を配付しました。
22日の学級懇談会時には4~6年生に,ふくしま学力テストの個人票を配付します。個人ごとの結果は,その通りですが,学年毎の平均正答率では,どういう状況なのかをお知らせします。全国や県平均を100とした場合の本校児童の正答率を数字で表しました。100より大きくなると正答率が高く,問題をよく解けていたということになります。
 なお,県独自のふくしま学力テストは前学年からの学力の伸びが,5・6年生については「レベル」によって分かるようになっています。

全国学力テスト6年 全国平均比6年 福島県平均費
国語科***(紙媒体で通知)***(紙媒体で通知)
算数科***(紙媒体で通知)***(紙媒体で通知)
ふくしま学力テスト4年 県平均比5年 県平均比6年 県平均比
国語科***(紙媒体通知)***(紙媒体通知)***(紙媒体通知)
算数科***(紙媒体通知)***(紙媒体通知)***(紙媒体通知)

 全国学力テストの算数科は福島県が過去初めての全国最下位でしたが,沢石小の6年生は好成績でした。しかし,まだ伸びしろはありますので,学力向上が図れる指導や効果的な家庭学習の指導に力を尽くしていきます。

◆ 身近になる中学受験
 現在,福島県には2つの県立中学校があります。会津学鳳中学校とふたば未来学園中学校で,共に高校との中高一貫校です。そして,令和7年度に県立安積中学校・高等学校(仮称)が開校しますので,6年度の冬には中学入試(募集定員60名)が始まります。現在の5年生が6年生の年です。入試ですから結構難しい問題が出題されますが,是非チャレンジして欲しいと思います。
 試験は適性検査という各教科の総合的学力を測るペーパーテストと文章の読解力や表現力を測るペーパーテストを1時間ずつ。そして集団面接を行います。裏面(紙媒体のみ)に昨年度の適性検査の一部を掲載しましたので解いてみて下さい。県立中学校が求める学力が理解できます。なお,掲載したのは検査Ⅰの6分の1に当たるので10分程度で解く分量になっています。入試問題なので,6~7割程度正解すると合格できるのではないかと思います。

校長室だより「自立の丘」№14 令和5年9月7日発行

2023年9月8日 09時20分

◆ 人間の体は“水”でできている
 今年ほど熱中症を心配した年はなかったかと思いますが,同時に飲料水の大切さにも気付かされました。熱中症の恐ろしさの一つは脱水症状ですが,世界には熱中症以外による脱水症状で命を失う子どもがたくさんいることにも思いを到らせたいと考えました。そこで,全校集会で以下のような話をしました。

魔法の水 ORS(Oral Rehydration Solution)とは何?

◆これは魔法の水と呼ばれているORSという飲み物ですが,飲んでみたいと思う人はいますか?(ここで校長手作りのORS<経口補水液>を飲んでもらいました。)感想を聞いてみましょう。おやおや,美味しくないと言っていますね。でも,このORSを必要とする人がいるのですが,どんな人だと思いますか。実は,開発途上国の子ども達に必要なのです。開発途上国とは,人々が生活するための「インフラ」と呼ばれる,道路・鉄道・水道・電気・ガス・学校などがきちんと整っていない国々のことで,地球上ではアフリカやアジアに多くあります。

◆それでは,どうしてアフリカやアジアの子ども達はORSを必要としているのでしょうね。実は,このORSを飲むと体の外に出ていってしまった水分を補うことが出来て,体力を回復させることが出来るからなのです。日本では,もっと美味しくしたORSを熱中症から快復する時に飲んでいます。それは,スポーツドリンクやOS-1等です。

◆現在,世界中で毎年,およそ660万人の5歳より小さい子ども達が病気や戦争,食べ物が足りないことで亡くなっています。毎日,1万8千人の小さい子どもが亡くなっていることになります。1万8千人というと三春町の総人口(約1万7千人)と同じくらいになります。こうしていても,世界のどこかで,1秒間に5人もの小さい子ども達が亡くなっているのです。一番多くの子ども達が亡くなっているのが,アフリカやアジアの開発途上国なのです。

◆アフリカやアジアの子ども達が病気で亡くなっていく一番の原因は何だと思いますか。それは何とお腹を壊す「下痢」なのです。下痢で毎年およそ60万人ほどの子ども達が亡くなっているのです。わずか10日間で三春町の総人口と同じくらいの子ども達が下痢が原因で亡くなってしまうんです。下痢で体の外に水分が出ていってしまって,脱水症状というのになって亡くなってしまうんです。

◆ここで,脱水症状から命を守ってくれるのが,さっきのORSです。私が特別に作ってきた飲み物だったのです。この命を救う魔法の水のようなORS1リットルは日本で作るといくら位だと思いますか。わずか10円です。水道の水に砂糖と食塩を入れて作りました。なぜ,こんなに安くて簡単に作れるORSがあるのに1年に60万人もの子ども達が下痢で亡くなっているのでしょうか。開発途上国には,飲んで良い安全な水がとても少ないのです。日本では水道の蛇口から,きれいな水がいつも出てきます。しかし,開発途上国では川や池の水,あまりきれいではない井戸の水を利用しています。その水の中には下痢を起こしやすい,ばい菌が多く生きています。また,ばい菌が多いので,簡単にはORSを作ることが出来ないのです。

◆日本に住んでいる私たちに出来る事がありそうな気がしますね。ユニセフという世界の国々が力を合わせて創っている集まりが,開発途上国の水道やきれいな井戸を作ること,ORSを送ってあげることなどをしています。機会があれば,ユニセフへ寄附することも,私たちに出来る事の一つかも知れませんね。大人になったらたくさんの寄附を考えて下さい。その他にも,普段の生活で水や食べ物を無駄にしないこととか,ニュースや新聞で世界のことに関心を持つとか,みんなが出来ることは色々ありそうですね。

校長室だより「自立の丘」№13 令和5年8月28日発行

2023年8月29日 10時55分

◆ 1学期の再スタート(本校は2学期制をとっています)
 長いと思っていた夏休みもお子さんにとってはアッと言う間に終わった感じではないでしょうか。教師も夏休み中に色々やろうかなと考えるのですが,思い通りにならない夏休みに終わってしまうことが多いようです。私などは,そんな夏休みを40回近く,小学生の頃からを加えると55回も繰り返しています。人間って進歩しないなあと感じます。もし,お子さんが充実した夏休みを送れなかったとしても悲観することはないと思います。ですから,心機一転の切り替えも大事なので,夏休み後の初日に以下のような話をしました。

“はじまりの会”の話 ~ 努力することで人は輝く ~

 昨日で長い35日間の夏休みが終わり,今日は,また授業が始まる日です。夏休みに3つのチャンスを生かすように話しましたが,どうでしたか。『学習』『挑戦』『家庭の仕事』の3つのチャンスでした。夏休みで付けた力を生かして自分をぐんと伸ばすのが,これからですから,がんばっていきましょう。

 私は今朝,学校に来る時,田んぼを見かけました。登校班で登校する人の中には歩いてくる途中に田んぼがある人もいるんじゃないかな。夏休みの間に稲がずいぶんと大きく成長したことに気づきましたか。

 春に田植えをした頃には薄い黄緑色で,あんなに小さく細かった稲が,とても濃い緑色で太くて何本もに増えて大きくなっていました。実は夏休み中に目立たないような小さな花を咲かせ実である米ができ始めているんです。これから秋に向かって稲は花だったところにたくさんのお米を実らせていきます。楽しみですね。

 でも,不思議じゃありませんか。あんなに濁った泥の中に生えていて泥の中の栄養を吸い上げているのに,真っ白で輝くような艶(つや)のある,おいしいお米が出来るのですよ。私は不思議でたまりませんでした。でも,夏休み中にあの田んぼの稲を見ているうちに思い付きました。それは人間の努力というがんばりとその人が力を伸ばした輝く姿との関係です。がんばっている姿は,人から見ているとかっこ悪く,濁った泥水のように見えるかも知れません。でも,そのかっこ悪い姿の中で努力して力を伸ばすから,光り輝くような自分になれるのではないかということです。稲の姿とこれから実るお米から,努力とがんばることの大切さを教えられたように感じました。光り輝くような活躍をする人は,実は人に見られないところで頑張っているものなんですね。出来ないことを「出来ない」というのを恥ずかしがってはいけないし,出来ないことを頑張って出来るようにしようとしている人を「かっこわるいなあ」などとバカにしてはいけません。

 今日から夏休みで止まっていた授業が始まります。1学期の始業式にみんなは自分のめあてを立てたはずです。でも,それが自分にとって良いめあてとなった人ばかりではないと思います。いつの間にか忘れてしまった人もいるかも知れません。そこで,自分の学校生活のめあてを確かめたり,見直したりして下さい。その時,1学期の終わり10月6日にどんな自分になっていることが素敵なのかを考えて,めあてを見直すことが大事です。力いっぱいに根から栄養や水を吸い上げて米を実らせていく稲に負けないよう,光り輝く沢石の子どもになるため,今日からの1学期の残り30日間をがんばり通す,めあてという頑張る心のパワーを,44人の全校生が持って欲しいと思います。

校長室だより「自立の丘」№12 令和5年7月20日発行

2023年7月21日 13時26分

◆ 成長の夏休みに
 いよいよ夏休みです。子どもが家庭で過ごす時間が多くなりますし,昼食の心配もあるので,ちょっと気の重い親御さんも居られるかも知れませんね。しかし,学校の授業ででは身に付けられない学力,例えば“進んで学習する力”“疑問を解き明かす力”“計画的に続ける力”などを身に付けるチャンスです。以下のような話をしました。

 夏休みのチャンスを活かそう

 明日から長い夏休みが始まります。やる気のある人が何かを積み重ねると,夏休みには,きっとすごい事ができるような気がしますよね。夏休みは,みんなにとって『チャンス』なのです。
 まず第一には,学校の授業はお休みですから,新しい学習が進められるという事はありません。よく身に付いていない学習をやり直したり,学習した事を確かめたりすれば,休み明けの学習をすらすら出来るようになります。つまり,学習がちょっと皆より遅れたなと感じている人は追い付く『チャンス』です。
 第二には,長い夏休みにしか出来ない学習に取り組む事が出来ます。長い時間をかけて生き物や草花をじっくり観察したり,疑問に思ったことを実験したりして理科の自由研究に挑戦する事や普段よりも長い作文に取り組む事,いつもより厚い本を読む事,読書感想文に挑戦する事などです。つまり,普段「やらされているなあ」と感じている学習に対して挑戦して見返してやる『チャンス』です。
 第三には,家族のためになる家庭の仕事を,学校がある日よりも多くする事ができます。そうすると,家族に喜んでもらう事ができ,家庭を幸せにする役割を果たす事ができます。つまり,お手伝いではなく家庭の仕事の一つを任せてもらう「家事の分担」をするのです。学級で配る『夏休みの生活』というプリントにも「お手伝いをしましょう」ではなくて,「仕事を決めて毎日続けよう」となっているはずです。食器の片づけでもお風呂掃除でも良いので心を込めてやりましょう。仕事の事を英語でJobと言いますが,家の人にGood Job(いい仕事してますねえ)と言われるかも知れませんよ。つまり,家族に認めてもらえる『チャンス』です。
 私は小学校4年生の時の夏休みの自由研究で,アサガオの花が咲く瞬間を連続写真で撮ってやるぞと挑戦しました。朝6時に起きました。もうアサガオは咲いていました。次の日は5時に起きました。アサガオは咲いていました。次の日は4時に起きました。それでもアサガオは咲いていました。でも,完全には開いていませんでした。アサガオとの早起き競争になりました。寝坊したり見ている間に居眠りしてしまったりと失敗もあったので10日以上経ったある朝,3時半に起きて見ていると,4時前の暗いうちに,あのドリルのような蕾(つぼみ)が微(かす)かに動き始め,翼を広げるように微かな「シュッ」という音と共に花が開いたのです。とても感動しました。シャッターを押すのも忘れるほどでした。アサガオの花が咲く時に音がするなんて,どの図鑑にも載っていませんでした。もしかすると私の気のせいだったのかも知れません。しかし,アサガオの花の咲く瞬間を見た時の胸のドキドキが今も忘れられません。そして,何より大人になっても夏休みに挑戦した自由研究をこうして覚えているのです。自分で考えて挑戦し苦労して体験した事なので,自分の身に付いたのだと思います。
 さあ,明日からの夏休み,チャンスを生かすかどうかは自分次第です。3つのチャンス「学習」「挑戦」「家庭の仕事(Job)」を是非生かして下さい。

校長室だより「自立の丘」№11 令和5年7月6日発行

2023年7月6日 13時59分

◆ もうすぐ夏休み  ~ 夏休みならではの学習を ~
 7月21日から35日間の夏休みに入ります。普段の宿題では中々身に付けられない学力を高めさせたいと願っています。それは“探究力”(問題を解き明かしていく力)と“主体性”(進んで学習しようとする態度)です。そして,それに打って付けなのが“理科自由研究”です。
 我が家の息子や娘は,二人とも6年間“理科自由研究”に取り組みました。1・2年生の頃は親が手伝いましたが,学年が進むに従って,徐々に自分で出来るようになり,高学年の頃には,親は見守るだけになりました。何回かは素敵な賞も頂き,幸せだったと感じています。
 親としては,進んで学習する気持ちを育てたいという願いもありましたが,やり遂げた達成感や自信が良い思い出となり,子供達の人生を応援してくれたら良いとも考えていました。それは確かめようのない事ですが,それぞれ6冊ある研究作品のその後の行方が教えてくれました。子供達は家を出る時,自分の部屋の荷物を整理して引っ越して行ったのですが,6冊の作品は,それぞれの部屋の寂しくなった棚に“大事そうに”揃えて置いてありました。

    夏休みは思い出づくりのチャンス ~ 理科自由研究のすすめ ~   
 6年生の私は,夏休みが,もうすぐというある日「理科の自由研究に何をやろうかなあ。」と,ぼんやり家の正面に見える山,片曽根山を見ていました。「小学生最後の夏休みだから,あの山みたいに,でっかいことに挑戦したいなあ。」と,ふと思いました。そして,こんなことを思いつきました。「よし,あの山にある花や草などの植物を全種類採集して押し花標本を作ってやるぞ」と。今,考えると,その頃に現在人気のNHK朝ドラ『らんまん』のモデルとなった牧野富太郎博士の伝記を読んでいたからかも知れません。日本中を植物採集して歩き回り,日本で初めての植物図鑑を創った,すごい博士です。
 夏休みが始まると,行ける日は毎日のように山に出掛けて,籠に入るだけのたくさんの植物を根っこごと採ってきて,新聞紙に挟んで重石をのせ,押し花標本を作っていきました。同時に植物の名前を植物図鑑で調べました。何日か経つとすぐに山の全種類の植物採集をすることは,到底無理で如何に大変な事なのかに気付きました。採っても採っても,まだ採っていない植物が,それこそ山のようにあるのです。驚きました。「山の全種類の植物」としていた自由研究の目標を「夏休み中に出来るだけ」と変えざるを得ませんでした。
 今まで「草」と一言で呼んでいた植物が,実際は,たくさん有りすぎて,標本に出来たのは,50種類位でした。でっかい挑戦は成功しませんでしたが,それでもいろいろ分かりました。植物には,とてもたくさんの種類があること,植物の一つ一つに素敵な名前や面白い名前があること,山の上の方にしかない植物があること,毒のある植物もいくつか身近にあることなどです。例えば,家の近くにあったタケニグサという植物は切ると茎から黄色い汁が出るのですが,それが毒だったんです。私はタケニグサを押し花標本にする時に切ったので黄色い汁に触ってしまいました。口に入れなかったので助かりました。だから,タケニグサは今でも一目で分かります。いろいろ分かった事と一緒に「自由研究を一生懸命やったなあ」という良い思い出が出来ました。
 当たり前だと思っていることや不思議だと思ったことを実際にやって確かめてみる事に自分から挑戦できる学習。それが夏休みの理科自由研究なんです。自分で考えて自分で研究を進めていくので,夏休み中に1ヶ月以上学び続けることが出来ます。私達の目標の一番目「自ら学び続ける子ども」にぴったりです。完全にやり遂げることが出来なくても,私のように自由研究が夏休みの一番の良い思い出になることもあります。先生方やお家の方と相談したり,科学に関する本を読んだりして,今のうちに計画を立ててください。自分の心を励ましてくれるような良い思い出の1つを手に入れるためにも,自由研究にぜひ取り組んでほしいと思っています。