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2024年6月の記事一覧

にっこり 校長室だより「自立の丘」№35 令和6年6月5日発行

◆ 思いやりは つながる~『情けは人のためならず』~
 身の回りに起きた小さな出来事から先人の残した教訓を思い出すことがあります。誤解
して理解していることの多い諺(ことわざ)について子どもたちに分かりやすく話しました。

『情けは人の為(ため)ならず』という「ことわざ」があります。どんな意味だと思いますか。「情け」とは「人の情けを知って涙が出る」のように「優しさ」とか「思いやり」のことです。そうすると「優しくすることは人のためにならない。却って,厳しくする方がその人が成長することになるのでよい」という意味になってしまうのでしょうか。

 この前の日曜日にこんなことがありました。私はホームセンターにボールペンの替え芯が欲しくて買い物に出かけました。ボールペンの替え芯を1本,手に取るとレジに並びました。日曜日なのでレジにはカゴにたくさんの品物を入れた人たちが長い列を作っていました。みんな自分の前の人のカゴの中身のたくさんの品物を見て,いやそうな顔をしています。よほど忙しいのか,みんな少しでも早くレジでの会計を終わらせたいと思っているようでした。

 ずいぶん長い時間が経って,ようやく私の前に並んでいる人が一人のおばさんだけになりました。カゴには洗剤やらスポンジやら,たくさんの品物がいっぱい入っていました。私は,レジでの会計が終わるには,さらに多くの時間がかかるだろうなと覚悟しました。その時です。そのおばさんが,ちらっと私の手の1本だけのボールペンの替え芯を見て,こう言いました。「お先にどうぞ」と。私はびっくりしました。おばさんも長く待ってイライラしていたはずなのに,1つの品物の会計が終われば,すぐに帰れる私のために順番を譲ってくれたのです。私はお礼を言うとレジでの会計を済ませて,うれしいことに考えていたより早く店を出ることができました。

 私は,家に帰る車の中で考えました。「優しい人もいるものだな」と。また同時に思い出しました。実は去年,私は逆のことをしたことがあったのです。全く違うスーパーマーケットのレジで,私の後ろに並んでいたおじさんが,果物を1袋だけ持っていたので,この前の日曜日のおばさんのように順番を譲ったことがあったのです。それを思い出したら,まるで優しさが巡り巡って自分に戻ってきたような気になりました。こんなことを表した「ことわざ」が『情けは人の為ならず』なんです。

 「人に優しくしてあげるということは,その人のためではなくて巡り巡って自分に返ってくるから結局は自分のためになり,優しさの溢(あふ)れる世の中になるんだよ。」というのが,その意味なんです。人に優しくすると,優しくされた人は,その他の人に優しくします。そうして優しさは社会に広がり,みんなが互いに思いやる住みよい社会になっていくのです。「優しさ」って,すごい力を持っている思いやりの心だと思いませんか。学校みんなの教育目標の一つ「つながり合う」ためには,そんな優しさや思いやりのある素敵な心を持つことが大切です。自分に優しく接してくれない人がいたら,逆に優しくすると,その人の心が優しい素敵な心に変わってくれるかも知れません。イソップ童話の『北風と太陽』のような感じです。まずは学校,そして沢石地区,三春町を優しさでつながる社会にしましょう。

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