校長室からお届けします

校長室だより「自立の丘」

にっこり 校長室だより「自立の丘」№14 令和5年9月7日発行

◆ 人間の体は“水”でできている
 今年ほど熱中症を心配した年はなかったかと思いますが,同時に飲料水の大切さにも気付かされました。熱中症の恐ろしさの一つは脱水症状ですが,世界には熱中症以外による脱水症状で命を失う子どもがたくさんいることにも思いを到らせたいと考えました。そこで,全校集会で以下のような話をしました。

魔法の水 ORS(Oral Rehydration Solution)とは何?

◆これは魔法の水と呼ばれているORSという飲み物ですが,飲んでみたいと思う人はいますか?(ここで校長手作りのORS<経口補水液>を飲んでもらいました。)感想を聞いてみましょう。おやおや,美味しくないと言っていますね。でも,このORSを必要とする人がいるのですが,どんな人だと思いますか。実は,開発途上国の子ども達に必要なのです。開発途上国とは,人々が生活するための「インフラ」と呼ばれる,道路・鉄道・水道・電気・ガス・学校などがきちんと整っていない国々のことで,地球上ではアフリカやアジアに多くあります。

◆それでは,どうしてアフリカやアジアの子ども達はORSを必要としているのでしょうね。実は,このORSを飲むと体の外に出ていってしまった水分を補うことが出来て,体力を回復させることが出来るからなのです。日本では,もっと美味しくしたORSを熱中症から快復する時に飲んでいます。それは,スポーツドリンクやOS-1等です。

◆現在,世界中で毎年,およそ660万人の5歳より小さい子ども達が病気や戦争,食べ物が足りないことで亡くなっています。毎日,1万8千人の小さい子どもが亡くなっていることになります。1万8千人というと三春町の総人口(約1万7千人)と同じくらいになります。こうしていても,世界のどこかで,1秒間に5人もの小さい子ども達が亡くなっているのです。一番多くの子ども達が亡くなっているのが,アフリカやアジアの開発途上国なのです。

◆アフリカやアジアの子ども達が病気で亡くなっていく一番の原因は何だと思いますか。それは何とお腹を壊す「下痢」なのです。下痢で毎年およそ60万人ほどの子ども達が亡くなっているのです。わずか10日間で三春町の総人口と同じくらいの子ども達が下痢が原因で亡くなってしまうんです。下痢で体の外に水分が出ていってしまって,脱水症状というのになって亡くなってしまうんです。

◆ここで,脱水症状から命を守ってくれるのが,さっきのORSです。私が特別に作ってきた飲み物だったのです。この命を救う魔法の水のようなORS1リットルは日本で作るといくら位だと思いますか。わずか10円です。水道の水に砂糖と食塩を入れて作りました。なぜ,こんなに安くて簡単に作れるORSがあるのに1年に60万人もの子ども達が下痢で亡くなっているのでしょうか。開発途上国には,飲んで良い安全な水がとても少ないのです。日本では水道の蛇口から,きれいな水がいつも出てきます。しかし,開発途上国では川や池の水,あまりきれいではない井戸の水を利用しています。その水の中には下痢を起こしやすい,ばい菌が多く生きています。また,ばい菌が多いので,簡単にはORSを作ることが出来ないのです。

◆日本に住んでいる私たちに出来る事がありそうな気がしますね。ユニセフという世界の国々が力を合わせて創っている集まりが,開発途上国の水道やきれいな井戸を作ること,ORSを送ってあげることなどをしています。機会があれば,ユニセフへ寄附することも,私たちに出来る事の一つかも知れませんね。大人になったらたくさんの寄附を考えて下さい。その他にも,普段の生活で水や食べ物を無駄にしないこととか,ニュースや新聞で世界のことに関心を持つとか,みんなが出来ることは色々ありそうですね。

0

にっこり 校長室だより「自立の丘」№13 令和5年8月28日発行

◆ 1学期の再スタート(本校は2学期制をとっています)
 長いと思っていた夏休みもお子さんにとってはアッと言う間に終わった感じではないでしょうか。教師も夏休み中に色々やろうかなと考えるのですが,思い通りにならない夏休みに終わってしまうことが多いようです。私などは,そんな夏休みを40回近く,小学生の頃からを加えると55回も繰り返しています。人間って進歩しないなあと感じます。もし,お子さんが充実した夏休みを送れなかったとしても悲観することはないと思います。ですから,心機一転の切り替えも大事なので,夏休み後の初日に以下のような話をしました。

“はじまりの会”の話 ~ 努力することで人は輝く ~

 昨日で長い35日間の夏休みが終わり,今日は,また授業が始まる日です。夏休みに3つのチャンスを生かすように話しましたが,どうでしたか。『学習』『挑戦』『家庭の仕事』の3つのチャンスでした。夏休みで付けた力を生かして自分をぐんと伸ばすのが,これからですから,がんばっていきましょう。

 私は今朝,学校に来る時,田んぼを見かけました。登校班で登校する人の中には歩いてくる途中に田んぼがある人もいるんじゃないかな。夏休みの間に稲がずいぶんと大きく成長したことに気づきましたか。

 春に田植えをした頃には薄い黄緑色で,あんなに小さく細かった稲が,とても濃い緑色で太くて何本もに増えて大きくなっていました。実は夏休み中に目立たないような小さな花を咲かせ実である米ができ始めているんです。これから秋に向かって稲は花だったところにたくさんのお米を実らせていきます。楽しみですね。

 でも,不思議じゃありませんか。あんなに濁った泥の中に生えていて泥の中の栄養を吸い上げているのに,真っ白で輝くような艶(つや)のある,おいしいお米が出来るのですよ。私は不思議でたまりませんでした。でも,夏休み中にあの田んぼの稲を見ているうちに思い付きました。それは人間の努力というがんばりとその人が力を伸ばした輝く姿との関係です。がんばっている姿は,人から見ているとかっこ悪く,濁った泥水のように見えるかも知れません。でも,そのかっこ悪い姿の中で努力して力を伸ばすから,光り輝くような自分になれるのではないかということです。稲の姿とこれから実るお米から,努力とがんばることの大切さを教えられたように感じました。光り輝くような活躍をする人は,実は人に見られないところで頑張っているものなんですね。出来ないことを「出来ない」というのを恥ずかしがってはいけないし,出来ないことを頑張って出来るようにしようとしている人を「かっこわるいなあ」などとバカにしてはいけません。

 今日から夏休みで止まっていた授業が始まります。1学期の始業式にみんなは自分のめあてを立てたはずです。でも,それが自分にとって良いめあてとなった人ばかりではないと思います。いつの間にか忘れてしまった人もいるかも知れません。そこで,自分の学校生活のめあてを確かめたり,見直したりして下さい。その時,1学期の終わり10月6日にどんな自分になっていることが素敵なのかを考えて,めあてを見直すことが大事です。力いっぱいに根から栄養や水を吸い上げて米を実らせていく稲に負けないよう,光り輝く沢石の子どもになるため,今日からの1学期の残り30日間をがんばり通す,めあてという頑張る心のパワーを,44人の全校生が持って欲しいと思います。

0

にっこり 校長室だより「自立の丘」№12 令和5年7月20日発行

◆ 成長の夏休みに
 いよいよ夏休みです。子どもが家庭で過ごす時間が多くなりますし,昼食の心配もあるので,ちょっと気の重い親御さんも居られるかも知れませんね。しかし,学校の授業ででは身に付けられない学力,例えば“進んで学習する力”“疑問を解き明かす力”“計画的に続ける力”などを身に付けるチャンスです。以下のような話をしました。

 夏休みのチャンスを活かそう

 明日から長い夏休みが始まります。やる気のある人が何かを積み重ねると,夏休みには,きっとすごい事ができるような気がしますよね。夏休みは,みんなにとって『チャンス』なのです。
 まず第一には,学校の授業はお休みですから,新しい学習が進められるという事はありません。よく身に付いていない学習をやり直したり,学習した事を確かめたりすれば,休み明けの学習をすらすら出来るようになります。つまり,学習がちょっと皆より遅れたなと感じている人は追い付く『チャンス』です。
 第二には,長い夏休みにしか出来ない学習に取り組む事が出来ます。長い時間をかけて生き物や草花をじっくり観察したり,疑問に思ったことを実験したりして理科の自由研究に挑戦する事や普段よりも長い作文に取り組む事,いつもより厚い本を読む事,読書感想文に挑戦する事などです。つまり,普段「やらされているなあ」と感じている学習に対して挑戦して見返してやる『チャンス』です。
 第三には,家族のためになる家庭の仕事を,学校がある日よりも多くする事ができます。そうすると,家族に喜んでもらう事ができ,家庭を幸せにする役割を果たす事ができます。つまり,お手伝いではなく家庭の仕事の一つを任せてもらう「家事の分担」をするのです。学級で配る『夏休みの生活』というプリントにも「お手伝いをしましょう」ではなくて,「仕事を決めて毎日続けよう」となっているはずです。食器の片づけでもお風呂掃除でも良いので心を込めてやりましょう。仕事の事を英語でJobと言いますが,家の人にGood Job(いい仕事してますねえ)と言われるかも知れませんよ。つまり,家族に認めてもらえる『チャンス』です。
 私は小学校4年生の時の夏休みの自由研究で,アサガオの花が咲く瞬間を連続写真で撮ってやるぞと挑戦しました。朝6時に起きました。もうアサガオは咲いていました。次の日は5時に起きました。アサガオは咲いていました。次の日は4時に起きました。それでもアサガオは咲いていました。でも,完全には開いていませんでした。アサガオとの早起き競争になりました。寝坊したり見ている間に居眠りしてしまったりと失敗もあったので10日以上経ったある朝,3時半に起きて見ていると,4時前の暗いうちに,あのドリルのような蕾(つぼみ)が微(かす)かに動き始め,翼を広げるように微かな「シュッ」という音と共に花が開いたのです。とても感動しました。シャッターを押すのも忘れるほどでした。アサガオの花が咲く時に音がするなんて,どの図鑑にも載っていませんでした。もしかすると私の気のせいだったのかも知れません。しかし,アサガオの花の咲く瞬間を見た時の胸のドキドキが今も忘れられません。そして,何より大人になっても夏休みに挑戦した自由研究をこうして覚えているのです。自分で考えて挑戦し苦労して体験した事なので,自分の身に付いたのだと思います。
 さあ,明日からの夏休み,チャンスを生かすかどうかは自分次第です。3つのチャンス「学習」「挑戦」「家庭の仕事(Job)」を是非生かして下さい。

0

にっこり 校長室だより「自立の丘」№11 令和5年7月6日発行

◆ もうすぐ夏休み  ~ 夏休みならではの学習を ~
 7月21日から35日間の夏休みに入ります。普段の宿題では中々身に付けられない学力を高めさせたいと願っています。それは“探究力”(問題を解き明かしていく力)と“主体性”(進んで学習しようとする態度)です。そして,それに打って付けなのが“理科自由研究”です。
 我が家の息子や娘は,二人とも6年間“理科自由研究”に取り組みました。1・2年生の頃は親が手伝いましたが,学年が進むに従って,徐々に自分で出来るようになり,高学年の頃には,親は見守るだけになりました。何回かは素敵な賞も頂き,幸せだったと感じています。
 親としては,進んで学習する気持ちを育てたいという願いもありましたが,やり遂げた達成感や自信が良い思い出となり,子供達の人生を応援してくれたら良いとも考えていました。それは確かめようのない事ですが,それぞれ6冊ある研究作品のその後の行方が教えてくれました。子供達は家を出る時,自分の部屋の荷物を整理して引っ越して行ったのですが,6冊の作品は,それぞれの部屋の寂しくなった棚に“大事そうに”揃えて置いてありました。

    夏休みは思い出づくりのチャンス ~ 理科自由研究のすすめ ~   
 6年生の私は,夏休みが,もうすぐというある日「理科の自由研究に何をやろうかなあ。」と,ぼんやり家の正面に見える山,片曽根山を見ていました。「小学生最後の夏休みだから,あの山みたいに,でっかいことに挑戦したいなあ。」と,ふと思いました。そして,こんなことを思いつきました。「よし,あの山にある花や草などの植物を全種類採集して押し花標本を作ってやるぞ」と。今,考えると,その頃に現在人気のNHK朝ドラ『らんまん』のモデルとなった牧野富太郎博士の伝記を読んでいたからかも知れません。日本中を植物採集して歩き回り,日本で初めての植物図鑑を創った,すごい博士です。
 夏休みが始まると,行ける日は毎日のように山に出掛けて,籠に入るだけのたくさんの植物を根っこごと採ってきて,新聞紙に挟んで重石をのせ,押し花標本を作っていきました。同時に植物の名前を植物図鑑で調べました。何日か経つとすぐに山の全種類の植物採集をすることは,到底無理で如何に大変な事なのかに気付きました。採っても採っても,まだ採っていない植物が,それこそ山のようにあるのです。驚きました。「山の全種類の植物」としていた自由研究の目標を「夏休み中に出来るだけ」と変えざるを得ませんでした。
 今まで「草」と一言で呼んでいた植物が,実際は,たくさん有りすぎて,標本に出来たのは,50種類位でした。でっかい挑戦は成功しませんでしたが,それでもいろいろ分かりました。植物には,とてもたくさんの種類があること,植物の一つ一つに素敵な名前や面白い名前があること,山の上の方にしかない植物があること,毒のある植物もいくつか身近にあることなどです。例えば,家の近くにあったタケニグサという植物は切ると茎から黄色い汁が出るのですが,それが毒だったんです。私はタケニグサを押し花標本にする時に切ったので黄色い汁に触ってしまいました。口に入れなかったので助かりました。だから,タケニグサは今でも一目で分かります。いろいろ分かった事と一緒に「自由研究を一生懸命やったなあ」という良い思い出が出来ました。
 当たり前だと思っていることや不思議だと思ったことを実際にやって確かめてみる事に自分から挑戦できる学習。それが夏休みの理科自由研究なんです。自分で考えて自分で研究を進めていくので,夏休み中に1ヶ月以上学び続けることが出来ます。私達の目標の一番目「自ら学び続ける子ども」にぴったりです。完全にやり遂げることが出来なくても,私のように自由研究が夏休みの一番の良い思い出になることもあります。先生方やお家の方と相談したり,科学に関する本を読んだりして,今のうちに計画を立ててください。自分の心を励ましてくれるような良い思い出の1つを手に入れるためにも,自由研究にぜひ取り組んでほしいと思っています。
0

にっこり 校長室だより「自立の丘」№10 令和5年6月27日発行

◆ 可愛い子には旅を・・・  ~ 宿泊学習記 ~
 6月22日から1泊2日で福島県西郷村の国立那須甲子青少年自然の家に5・6年生17名が行ってきました。引率は私の他,教諭2名と養護教諭との4名です。
 1日目,あいにくの雨のために阿武隈川源流を訪ねるハイキングは中止となりました。そこで,雨天時のプログラムとして用意していた,白河だるまの絵付けを行ないました。こういう創作活動は子どもたちの才能が発揮されます。だるまの命は「顔」だということがよく分かりました。思わず「イイね」と言ってしまう個性豊かな顔が揃いました。
 絵付けはハイキングに比べて短時間で済むので,急遽「なすかしココどこ」という室内オリエンテ-リング(地図を片手にチェックポイントを探し出すゲーム)をやることになりました。この自然の家は,施設内を全て回るには1時間以上かかる程に極めて広いのです。雨が降っても施設内で楽しめるように造られています。
 夕食後は,真っ暗な部屋の中でキャンドルを囲んでの楽しいひとときを過ごし,大浴場でさっぱりと汗を流し就寝しました。
 2日目,雨が上がったので予定どおりの野外炊飯です。羽釜でご飯を炊きながら,カレーも作らなければなりません。薪に火をつける事から始めますので結構大変です。子どもたちは役割を分担し,協力して実にスムーズに美味しい昼食を作りあげました。もちろん先生達の力添えはありましたが,合格点のカレーライスでした。大変なのは片付けですが,食器や鍋をピカピカにして,宿泊室の掃除と合わせて「掃除パーフェクト」の賞状が学校に届きました。
 家庭を離れて「自分のことは自分でする」という経験は,自立へ向けて子どもを成長させます。今回の集団宿泊活動は「子どもには厳しい社会の経験を積ませた方が自立できるようになる」という諺(ことわざ)「かわいい子には旅をさせよ」通りでした。この諺を英語で表すと,「Spare the rod,and spoil the child.」(ムチを惜しむと子どもがダメになる)とも言います。体罰をして躾をせよという意味ではなく,古今東西「子どもの成長のためには苦労体験を積ませなさい」という事でしょう。教育活動が社会人としての自立への一助になれば,学校としても嬉しい限りです。

◆ 家族で利用できる自然の家
 我が家では20年位前,息子と娘が小学生の間,毎年「なすかし」に泊って自然体験することを夏休みの恒例行事にしていました。森の中で迷子になりかけて何とか生還したことや協力して野外炊飯をしたこと,虫取りをしたこと等もあって,家族の絆が深まりました。「なすかし」を30歳を過ぎた息子達が「家族の思い出ベストワン」の場所に挙げてくれていることに喜んでいます。
 県内には国立那須甲子青少年の家・磐梯青少年交流の家(2名以上利用可)と県立郡山・会津・いわき海浜自然の家(5名以上利用可)の5施設があり,いずれも食費程度で宿泊できます。家族の絆を深める思い出づくりにオススメです。

0